狼牙志士隊の日誌

イズレーン皇国所属・狼牙志士隊の日誌

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暗殺者?3

暗殺者の男に受けた毒で、意識を失った狼厳。
どのくらい時間が経ったか…ゆっくりと目を開くと、見慣れぬ天井。
そして漂う、ほんの少しの薬の匂い。

「…気が付かれましたか?」

涼やかな声が、すぐ近くから聞こえた。



暗殺者?シリーズの完結編。
とある方にご出演願い、許可を頂きました。
有難うございます!下手でごめんなさい!

もっと活躍して頂く予定だったのですが…力量不足orz
長文です。




頭を動かして声のした方角を見れば、
紫色の流れるような長髪の女性がいた。
その美貌と優れた医療技術から、国内外の者に
『先生』と慕われる医師であり、
国を代表する凄腕の英雄でもある女性。

「…カササギ、殿…」

狼厳も当然、彼女の事は知っていた。
…イズレーン皇国で彼女の名を知らぬ者など、
片手に数えて余るくらいであろうが。

『安静になさって下さいね。解毒は済みましたし、
 足の傷も縫合は済んでいますが…未だ塞がってはいませんので』

今日のところは、診療所で一日眠って行かれると良いでしょう。
そう続けながら、カササギは愛用の医療器具の手入れを
慣れた手つきで行っていた。

確かに、先程までの苦しみは一切ない。
足の痛みも、大分和らいでいる。
…が、狼厳にはそれよりも気がかりな事があった。

「…俺は、なぜ…ここに?」

そう、カササギ診療所は皇都郊外の川縁にある。
果し合いをした場所からは、結構な距離があるはずだ。

『……』

狼厳の問いかけに、カササギは頬に手を当て、少し考える仕草を見せる。
が…小さく頷くと、口を開いた。

『…本当は、言わないように…と頼まれたのですけれど。
 事情がおありのようですし…狼厳様は当事者。知る権利も、
 あるでしょうしね』





カササギの語るところによると、狼厳をこの診療所に運んできたのは、
黒髪に赤い鎧を纏った女騎士であったそうだ。
馬車に乗って診療所に現れ、巨漢である狼厳に肩を貸す格好で
診療所までやって来た。
彼女自身もかすり傷や擦り傷が目立ち、カササギがその治療を
申し出たものの、それを受ける事なく立ち去ったのだと言う。

「…やはり、あいつか…」

『…ケジメを着ける、と…ぽつりと呟いておられました。
 何か思い詰めた表情でしたが、心当たりは?』

一通り話し終えると、コポポ…とお茶を注ぎ、狼厳と自分の前に
それぞれ置く。それを一口頂いてから、カササギの言う、
心当たりについて思案する。

意識を取り戻したばかりで朦朧とする頭が、お茶の程好い熱さに
少し覚醒するのを感じた。
…同時に、思い至る。

「…暗殺者のギルド…」

あのとき、謎の男は確かに、『ギルド』と口にした。
でまかせだろうと聞き流した、国家に属さぬ暗殺者集団の噂を、
今思い出した。

『…なるほど。一時期騒がれた、例の…。
 実在していたのですね…。…という事は…あの方は、
 まさかお1人で…?』

「…ちっ…あの、バカめ…!」

カササギの推論に、あの女…セルヴィスならやりかねないと
感じた狼厳は、ベッドから身を乗り出す。
同時に、足にズキン…と鈍い痛みが走る。

「…っ!」

『いけませんよ、狼厳様。先程申し上げた通り、まだ傷は
 塞がっていません。今無理に動けば、下手をすれば今後歩行に
 障害が残る可能性があります』

痛みに思わず顔をしかめる狼厳を、カササギが優しく諭す。
しかし…ここで寝ているわけにはいかないのも、事実だった。
それでもと食い下がる狼厳に、カササギは少し困ったように
笑って、続けた。

『…分かりました。では…どちらに行かれるおつもりかは
 分かりませんが、私もお供します。これ以上は危ないと
 判断したら、止めます。…宜しいですね?』

医者として出来る精一杯の妥協であったのだろう。
狼厳もそれを察し、カササギに礼を言った。
診療所に飼われている馬を借り、2人はセルヴィスの後を追う。

『…時に、狼厳様。あの方の行先に心当たりは?』

「…初めに、あの女の気配を感じたのは…屋敷の近くにある町だった。
 あの近辺を当たってみようと思う。あの目立つ鎧だ、上手くすれば
 道中に目撃者がいるかも知れない」

『分かりました。…ユキミとダイフクも、情報収集に飛ばします。
 一刻を争う事態のようですしね』





それから、およそ一時間。
目撃情報を元に、カササギの眷属の助力も得て、
狼厳達はそれらしき建物を発見するに至った。

建物の中からは、怒号や剣戟が響いている。
…恐らく、ここで間違いないだろう。

『…念のためにと、剣を持ってきて正解でしたね…』

カササギの背には、戦場で使用している短刀が用意されていた。
陽宝剣と、陰宝剣。高い攻撃力を誇る武器だが、これで死者を
出さないで戦うというのだから、カササギの力量も推して知るべし、である。

「恐らくあの女は、中で戦っているはず…。
 …俺はあの女を死なせるつもりはない。
 …万一傷口が開いたら…宜しくお願いする」

『…最初から傷口を開くつもりで戦わないで下さいね?』

ジトッとした視線でこちらを見るカササギに小さく笑って
頷いてから、狼厳は刀を抜いた。
硬く閉ざされている門を、力任せの一太刀で斬る。

中にいた全員の視線が、一気にこちらに集中する。
数はおよそ…15名ほど。セルヴィスは、狭い部屋の入り口に立ち、
一対一の状況を作りながら、交戦していた。

『…狼厳…!』

「助太刀するぞ、女。…暗殺者ギルドの者共よ!
 我こそは、狼牙志士隊が筆頭・狼厳なり!
 我が首取って名を上げたい者は、かかって参れ!」

狼厳が愛刀を上段に構え、そう名乗りを上げる。
数人の暗殺者が、こちらに突進してくるが…狼厳に届く前に、
暗殺者の武器が滑らかに切断された。

『…私の前で殺生は禁物ですよ、狼厳様。出来る限り、
 命までは奪わないよう、注意してくださいね』

陽宝剣である。金属ですら、まるで紙でも切るようにすぅっと
斬ってしまうこの太刀。味方であるから頼もしいが、
敵である暗殺者にしてみれば、恐ろしいものだろう。

「…承知。…さぁ…我らに敵うと思うのならば、かかってくるが良い!」

狼厳も建物の中に踏み入り、峰打ちで敵を仕留めていく。
カササギの相手を翻弄する動きに、的確な攻撃。
狼厳の鎧など無きものとするような怪力。
セルヴィスの二本の剣による、鉄壁の守り。
暗殺者ギルドが全員戦闘不能になるまで、そう時間はかからなかった…。







「…暗殺者ギルド、全員自首…か」

時は流れて、一週間後。
あの後、狼厳は幸い傷口が開かなかったので、
痛み止めと包帯を貰って退院し、代わりに負傷した暗殺者ギルドの
メンバー全員がカササギ診療所に入院する事になった。
当初は心配した狼厳とセルヴィスだったが…

『…一体あの女医は、どのような説教をしたのだろうな』

狼厳の後ろからその記事を見たセルヴィスが、ぽつりと呟く。
記事には、全員が全員、『自分のしてきた事の罪深さを知った』と
悔い改めている、と書かれている。

「…さてな。これもカササギ殿の人徳であろう」

『確かに、不思議な魅力のある女性ではあった、な』

…あの事件の後、セルヴィスは狼牙志士隊の屋敷に住む事になった。
事の経緯と、彼女の生い立ちを聞き、ウォルフガルドと楼華が
強く勧めた事もあり、セルヴィスもそれを受け入れた。

聞くとセルヴィスは、セフィドで『守戦の達人』と称された、
ラーズバード家という騎士の家系の出らしい。
暗殺者ギルドとの癒着を疑われた父が気を病み、
遠征に出ていたセルヴィス以外の一族を道連れに無理心中してから、
家名も零落れ、全てを失ったのだそうだ。

暗殺者ギルドにいたのは、復讐するために内部の事情を探る事。
そして、父の無実を証明する証拠を見つけるためだったらしい。

が、暗殺という仕事を潔しとせず、仕事を成功させた試しがなかった。
ギルドが狼厳を標的と定めたのは、失敗して死ねばそれまで、
成功すれば汚名返上、という腹積もりだったようだ。

『…しかし、狼厳。貴様、いつ足は治るのだ?』

「カササギ殿の話では…あと二週間は、安静にしておいたほうが
 良いのだそうだ」

『そうか。…早く治せよ。貴様との決着は、
 まだ着いていないのだからな』

「…まだ俺に勝つ気でいるのか…」

『当然だ。あれだけ言われて、黙って引き下がれるものか』

「…やっても無駄だと思うがな?」

『何だと…!貴様、喧嘩を売って――』

「喧しいぞ、小僧、小娘!!」

…狼厳とセルヴィスが言い争い、ウォルフガルドが諫める。
楼華はそれをクスクスと笑いながら見守る。

そんな新しい日常の一ページが、追加された。
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