狼牙志士隊の日誌

イズレーン皇国所属・狼牙志士隊の日誌

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悪夢

某つぶやきサイトやらでお話している中で浮かんだネタです。

甘めを目指してみましたが、ちっとも甘くない気がするのだぜ!( ゚Д゚)





敵味方入り混じる戦場に響いた、一発の銃声。
其処彼処で響く剣戟や怒号の中で、それはやけに大きく聞こえた。

胸騒ぎを感じて振り向いた狼厳が見たのは、
腹部を押さえて倒れこむ、愛する妻の姿。
白い手袋が真っ赤に染まって、元々色白な顔はさらに血の気が引いて。

こほ、と小さくせき込んだかと思えば、口から血が溢れ出る。

息つく間もないはずの戦場が、スローモーションのように緩やかに見えて。
その中で、正宗はゆっくりと膝を折り、地に伏した。

目の前が真っ暗になって、吐き気がして。
怒りか、悲しみか、憎悪か、あるいはそのすべてか。
何とも言えない感情が湧き出て、頭が混乱する。

狼厳は敵の攻撃が迫るのも忘れて、必死に手を伸ばした。

「正宗ーーーーー!!」


【悪夢】


必死に伸ばした手の先にあったのは、見慣れた天井。
隣を見れば、幸せそうな顔で高鼾をかく、同居ゴブリンのゴブ吉。

一度深呼吸をして、気持ちを落ち着けてからゆっくりと周囲を見回す。

見慣れた畳に、見慣れた仕事用の机。
少しさぼって溜め込んだ書類に、鍛錬用の器具。
それから、正宗用のお菓子を保存するための冷蔵庫。

紛れもなく、狼厳の自室であった。
そこで彼は、先程の光景が夢だったと理解し、深く安堵の息を吐いた。


「性質の悪い夢だ」


忌々しげに一つ舌打ちをしてから呟いて、軽く額を手の甲で拭う。
かなり寝汗をかいていたらしく、肌にへばりついた愛用の寝間着が、
未だに激しい動悸と併せて、狼厳の不快感を煽る。


「…無事に決まっている」


正宗は現在、遠征の最中だ。
相手は小規模な山賊団だと聞いている。
狼牙志士隊は同日に別の任務があったため同行できなかったが、
代わりに腕利きの傭兵が同行しているとも聞いた。

それに、正宗の腕前だ。
山賊などに後れを取るはずがない。

自らに言い聞かせるように、狼厳は心の中でそう唱えた。
それでもまだ、動悸は治まらない。


ドドドドド…


布団の上で狼厳が呼吸を整えていると、夜には似つかわしくない
けたたましい足音が二つ、この部屋に向かってくるのに気付く。


「父上、如何なさいました!?」

「父上、どうなさったんですか!?」


襖をスパァン!と勢い良く開けて顔を見せたのは、
未来からやってきた狼厳と正宗の娘、羽奈と沙耶だった。

先程狼厳は、夢の世界だけでなく、実際に正宗の名を叫んでいたのだ。
それを聞きつけて、2人は慌てて駆け付けたのだった。


「…いや、すまん。何でもない。少し嫌な夢を見ただけだ」


心配そうに自身を見る愛娘の姿に、ようやく落ち着きを取り戻した
狼厳は、小さく苦笑して手を振って見せた。
こんな騒ぎが間近で起きているというのに、隣のゴブ吉は変わらず
心地良さそうに鼾をかいていた。


「そうですか…良かった」

「はい、本当に…って、姉上…またそんな恰好で寝てらしたんですね…」

「あ…い、いや、その…寝やすくて、ついな…」

「つい、じゃありません!まったく姉上は…」


狼厳に何事もなかった事に安堵したのだろう、沙耶はいつものように、
姉である羽奈の服装―この時は大きめのシャツ一枚だけだった―に
ツッコミを入れ、羽奈もいつものように、沙耶をなだめようとしていた。


「ふぁ…お二人とも。今は真夜中ですから、程々になさってくださいね」


その2人を仲裁したのは、少し眠たげな楼華だった。
この二人も、幼い頃から世話になっている楼華には頭が上がらず、
申し訳なさそうに頭を下げる。

その2人の頭を優しく撫でながら、楼華は狼厳に声をかけた。


「正宗さん、お帰りは3日後の予定でしたよね。
 …ごちそうを作って、お菓子もたくさん用意しておきます」

「ああ…頼む。いつもすまないな、楼華」

「それは言わないお約束ですよ」







そして、3日後。
正宗は予想通り、傷一つ負わずに任務を終え、帰ってきた。


「ただいま。うーん…やっぱり落ち着くな」


軽く背伸びをしながら笑う正宗。
楼華・セルヴィス・ウォルフガルド・ゴブ吉・羽奈・沙耶が出迎える中、
狼厳は少し出掛けていたらしく、その輪の中にいなかった。


「…?狼厳はどうしたんだ?」


皆に一通り挨拶してから、正宗はきょろ、と狼厳を探す。
その言葉に、楼華は小さく苦笑した。


「正宗さんの好きなお菓子を買ってくる、ってお出掛けに。
 もうすぐ帰ってくると思いますよ」


今朝方から、狼厳は落ち着きがなかった。
お菓子を買いに行く、というのも恐らく建前に過ぎない。
本音は1分でも早く、正宗に会いたかったのだろう。

楼華の言葉を聞いていたかのように、タッタッタッ、と足音が聞こえてくる。
どんどん屋敷に近づいてきたそれは、やはり狼厳のものであった。


「正宗…っ!」


玄関の戸を開け、正宗の姿を認めると、
狼厳は安堵と喜びの入り混じった表情を浮かべた。

普段とは違う狼厳の様子を不思議に思いつつも、正宗は
柔らかく微笑んで、


「狼厳、ただい――」


ただいま、と言おうとした。
しかし、それよりも早く、彼女の華奢な体は狼厳の両腕に包み込まれていた。
普段の優しい抱擁とは違い、少し痛いくらいに力強く。


「な、ななな、なんだ、いきな―」

「…無事で、良かった…」


顔を真っ赤にして、狼厳の背中をたたこうとした正宗だったが、
狼厳がぽつりと呟いた声が、今にも泣き出してしまいそうな、何とも
儚げなものに感じられて。

叩こうとして伸ばしていた手を、そのまま狼厳の背に回して、
ぎゅっと抱きしめ返した。


「ふふ…バカ。私があの程度に任務をしくじるものか」

「…それも、そうなのだが」


たしかに、正宗はここにいる。
それを確かめるように、狼厳は強く強く、彼女を抱きしめた。
正宗もまた、普段とは違う狼厳の様子に何かを察したのか、
それを咎める事はせず、ただぎゅっと抱きしめ返した。

楼華達は、そんな2人のようを微笑ましく思いながら、
一足先に居間に戻り、食事の用意を始めたのだった。







「…ふふ…しかし、たかが夢で…ふふ」


そして、夕食後。
事の次第を聞いた正宗は、狼厳の自室で、堪えきれない様子で笑っていた。


「…俺とて、時には不安になる事もあるさ」


狼厳はというと、正宗の膝に頭を乗せて、少し困ったように笑っていた。


「だからか、珍しく甘えん坊なのは。大丈夫、私はここにいるぞ」


クスクスと笑いながら、正宗は狼厳の頭を撫でる。
普段撫でてばかりの狼厳は、その感覚に少し戸惑いつつも、
抵抗せずに頭を撫でられていた。


「ああ。…改めて、お帰り、正宗」

「うん、ただいま、狼厳」


そして、どちらからともなく顔を近づけて、軽く唇を重ねる。
少し顔が離れて目が合えば、どちらからともなく笑った。


「たまにはこうして、お前に甘えられるのも、悪くないな」

「俺としては、お前を甘やかすほうが良いが…。
 …そうだな。たまにはこういうのも、悪くない…か」


そして、2人は再び口付けを交わした。
その日の2人の語らいは、太陽が地平線から顔を覗かせるまで、
尽きることはなかったという…。
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