狼牙志士隊の日誌

イズレーン皇国所属・狼牙志士隊の日誌

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結婚式

結婚式のSSを書きました( ゚Д゚)
途中で力尽きた感が半端ないですが…!

魔女の青汁様にご出演頂いております、有難うございます(ペコリ



イズレーン皇国とヴァルトリエ帝国の国境付近の森に、
立派な教会があった。

辺りには集落もないが、外壁は、まるで最近建てられたように、清潔に保たれている。
凝った装飾の扉を開けて、中央の扉から中に入れば、赤い絨毯の敷かれた通路があり、
大人が3人腰掛けられるサイズの会衆席が、通路を挟んで5対。

その通路の先には黒檀製の主祭壇が置かれ、そのすぐ先に、この教会で祀っている
神を模した美しい彫刻が飾られている。

普段ミサなどで使われているわけでもなさそうなのに、
この教会が外装・内装共に清潔なのは、信心深い信徒や、
教会を利用した者が掃除をしているためだろう。

この教会は、古くより恋愛を守護する神を祀っているとされており、
結婚式の式場として密かな人気を集めているのだ。

刻碑暦999年・春の、優しい陽射しの降り注ぐ日。
その教会で一組の夫婦が、結婚式を挙げようとしていた。

新婦の名は正宗。新郎の名は狼厳。
ブリアティルトで、時には敵として、
そして時には味方として戦ってきた2人である。



【結婚式】


教会に入り、右側の通路を進んだ先に、新郎の控室があった。
そこでは新郎である狼厳と、友人らしい二人の男性が談笑していた。


『いよいよ、挙式ですか。
 お二人を付き合い始めの頃から知っている僕としては、
 やっと…という気もしますが、本当におめでとうございます』


微笑みを浮かべて、聖書を携えた紫髪の司祭服の青年が口を開く。
その笑みは、上辺のものではなく、心より新郎を祝っているのが
伝わってくる、優しいものだった。

彼の名は姫森咲耶。新郎新婦共通の友人である、半人半魔の青年だ。
彼の幼い頃を知る狼厳は、今の丁寧な咲耶を、成長したな…と微笑ましく思うと同時に、
現在の彼を一人の男として、友として、とても好ましく思っていた。
彼には、今回の式で司祭を頼んでいた。


「有難う、咲耶殿。マルコシアス殿も、来てくれて有難う。
 忙しかっただろうに、すまないな」


声をかけられたのは、新郎である狼厳だ。
普段纏っている甲冑ではなく、白いタキシードに身を包み、
その左胸を淡いピンクのブートニアで飾っている。


『いえ、とんでもございません。狼厳様と正宗お嬢様の挙式。
 お招き頂き、嬉しゅうございますよ』


狼厳が声をかけたのは、黒いスーツに身を包んだ、
同じく新郎新婦の共通の友人であるマルコシアス。
現在は『アスマ』と呼ばれる男性体だが、女性でいる時もある。

性格は、誠実を絵に描いたような人柄であると言えよう。
それ故に信頼できるし、一緒にいて心地が良かった。

2人とも、狼厳と正宗にとってかけがえのない友であり、
式を挙げるならば出来るならば手伝ってほしい、と願っていた人物である。
マルコシアスには介添人を依頼していた。


『では、そろそろ式の開始の刻限ですね。僕は用意をしてきます。
 狼厳さん、くれぐれも失敗しないように、気を付けてくださいね』

「ふふ、そうだな。右手と右足を同時に出したりしては、笑い者だ。
 …宜しく頼む、咲耶殿、マルコシアス殿」







そうして、式の開始を司祭である咲耶が宣言した。
狼厳は、介添人を頼んだマルコシアスと共に式場に入場する。

戦場に赴くのとは、種類がまるで違う緊張。
ドクンドクンと自身の胸が鳴るのを感じたが、会衆席にいる
見知った友人たちの顔や、自分以上に緊張している様子の羽奈や沙耶、
よく状況が分かっていないらしいゴブ吉の様子に、狼厳の顔は思わず綻んだ。


(…本当に、俺は友に恵まれたものだな)


ふぅ、と小さく息を吐いて、歩を進める。
そうして、咲耶のいる祭壇前の、右側に立ってから、再度小さく息を吐く。

少し間を置いて、狼厳も入ってきた扉が、ギィッと音を立てて開く。
自然と会場の視線はそちらに向く。
無論、狼厳も、そちらのほうに視線をやった。

そこにいたのは、黒いスーツに身を包んだ新婦の兄であるリベラルと…
新婦であり、狼厳にとってこの世で最も大切な女性・正宗。

色白な肌を覆うドレス。
流れるような銀の長髪を、今回は後ろでシニヨンにして、純白のベールに覆っている。
それに赤い宝石をあしらったティアラと、
色とりどりの花で飾られたカチューシャをつけており、
会場から小さく「ほぅ…」という感嘆の息が漏れる。

事前に記念撮影などでドレス姿を見る挙式も多いとは聞くが、
狼厳と正宗はそれをせず、式の場で改めて互いに衣装を知る、という
挙式を選択していた。

なので、正宗がどのような姿で来るかは、狼厳は知らなかった。


(…美しいな)


思わず、見惚れてしまう。
戦場や外での凛とした正宗も、
2人の時に見せる年相応の女の子としての正宗も、
怖い話を聞いてしまっておびえる正宗も、
愛し合っている時の正宗も。

それら全てを狼厳は知っていたが、それでも…いや、だからこそ、
ウエディングドレスに身を包んだ正宗の姿に、見惚れてしまった。


(…これが、俺の妻としての、正宗…か)


バージンロードを、ゆっくりとした足取りで、リベラルと正宗が歩いてくる。
正宗が近づいてくるにつれて、狼厳は自身の胸の鼓動が
早くなっているような気がした。

やがて、狼厳の左側に正宗が辿り着くと、リベラルと狼厳は向かい合い、
暫しじっと見つめ合ってから、一礼をする。


『泣かせでもしたら、承知せんぞ』

「分かっている。必ず、幸せにしてみせる」


言葉こそ発さなかったものの、2人は視線を交わす間に互いの意思を理解し、
小さく、しかし力強く礼をしたのだ。

狼厳が左腕を差し出すと、正宗はそこにするりと腕を絡ませた。
ふと目が合うと、照れくさいのか、幸福を噛み締めたのか、
あるいはその両方か、お互いに少し頬を染めて笑った。







讃美歌の斉唱が終わると、咲耶は携えていた聖書を開いた。
狼厳と正宗は、すっと目を閉じて、それに聞き入る。


『愛は寛容であり、愛は情深いものです。
 また、人をねたみません。愛は自慢せず、高慢になりません。
 礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず、怒らず、人のした悪を思わず、
 不正を喜ばずに真理を喜びます。
 すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐えます。
 愛は決して絶えることがありません』


涼やかな声が、静まった教会に響く。
その透き通った声で放たれた言葉は、狼厳と正宗の心に
直接語り掛けてくるような、そんな不思議な力を持っていた。

そして、ぱたりと聖書を閉じると、咲耶は小さく微笑んで、続けた。


『お二人は今、結婚の日を迎えられた喜びを噛み締めている事でしょう。
 これからお二人が築いていく未来や家庭に、思いを馳せている事でしょう。
 仲睦まじいお二人の事です。きっと幸せな家庭を築かれる事と思います。
 けれど、人と人とが共に暮らす以上、不平不満が出てこないとも限りません。

 ですが、それを避ける方法もあります。
 感謝の気持ちを忘れないこと。声に出して、有難うと言う事。
 それだけで、きっとお二人なら、これから先何年も何十年も、
 仲睦まじいご夫婦でいられる事と思います。
 お二人ならば、問題はないと思いますが…
 どうか、お二人でこれから先、幸せな家庭を築きあげてください』






そして、式はいよいよ佳境を迎える。
狼厳と正宗による、結婚の誓約だ。


『新郎・狼厳。
 貴方はここに居る正宗を、病めるときも、健やかなるときも、
 富めるときも、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?』


「誓います」


『新婦・正宗。
 貴方はここに居る狼厳を、病めるときも、健やかなるときも、
 富めるときも、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?』


「誓います」


『それでは、誓いの証として、指輪の交換をして頂きます』


咲耶の言葉の後、狼厳は正宗のグローブを取り外し、
向かい合ってから、そっと手を取る。
そして、指輪をゆっくりと、正宗の左手の薬指にはめた。

正宗も同様に、狼厳の左手の薬指に指輪をはめる。
互いに指輪の交換が終わると、咲耶が2人の手を取って重ね合わせ、
祝福を祈った。


『では、ベールをあげてください。…誓いのキスを』


そして、いよいよ誓いのキス。
狼厳は正宗に一歩歩み寄り、優しくベールをあげる。
そして、肘に優しく手をかけてから、眼を閉じた正宗の唇に、キスをした。

人前でのキスは苦手だという正宗だが、これは特別だ。
誓いのキスは、誓いの言葉を封じ込め、永遠のものとする意味を持つ。
だからこそ正宗も、唇へのキスを拒否はしなかった。


『ここに、狼厳と正宗が、主の御前において夫婦となった事を、宣言致します。
 お二人の未来に、輝かしき道が続きますように』





そうして、式が終わり。
参列者は会場の外で、新郎新婦が出てくるのを待っていた。
彼らの手にあるのは、チュールにラッピングされたお米。

やがて、2人が出てくると、参列者はお祝いの言葉や軽口などと共に、
2人にライスシャワーを浴びせた。

その参列者の中には、咲耶やマルコシアスと同じく、
2人の共通の友人であるリラの姿もあった。

装飾こそシンプルながら、何処か気品の感じられる
藤色のワンピースを纏った彼女は、隣に立つマルコシアスと同様に、
優しい笑みを浮かべていた。


『素晴らしい式だったわ。狼厳さん、正宗さん、本当におめでとう』

「リラ殿、来てくれて有難う。
 咲耶殿やマルコシアス殿のお力添えのおかげで、俺にとっても
 生涯忘れえぬ式となった」

『…お米じゃなくて爆弾を投げたかったのだけれど、今日は我慢してあげるわ。
 その代わり、正宗さんを泣かせたらダメよ?』


クスクス、と冗談めかして笑うリラ。
きっと彼女は、狼厳が正宗を泣かせるような真似はしない、と
確信しているのだろう。
狼厳も無論、そのようなつもりは毛頭なかった。


「無論だとも」

『よろしい』


短くそう会話をして、狼厳と正宗は歩いていく。
その後姿を見送り、再度小さく、リラは微笑んだ。







式の後、ブーケトスが行われる事となった。
正宗が後ろを向き、ポイッと投げたブーケ。
それを手にしたのは…。


「な、何故私のところに…」


取りに行っていた参列者ではなく、少し奥にいたセルヴィスだった。
普段は男と間違われる事の多い彼女も、今日は(楼華に叱られて)ドレスを
着てきており、ちゃんと女性に見える。


「い、いや、私よりもこれはもっとふさわしい人にだな」

「駄目ですよ、セルヴィスさん。こういうのはちゃんと持って帰りましょう」

「そうごぶー。部屋に飾るといーごぶ、きれーごぶ」

「ぐぬ…いや、しかし…」


その後も、あたふたとしているセルヴィスを、狼牙志士隊の面々は
なんとか落ち着かせて、ブーケトスは終わった。
結局、ブーケはセルヴィスが持ち帰り、ゴブ吉によって部屋に飾られる事となった。







そうして、式も終わり、その後に狼牙志士隊の屋敷で催された食事会も終わって。
狼厳と正宗は、狼厳の寝室でゆっくりとした時間を過ごしていた。


「何を書いているんだ、狼厳?」


机に向かって何か書いている狼厳に、アイスを頬張りながら正宗が声をかける。
狼厳が書いていたのは、文だった。
宛先は、咲耶とマルコシアス、そしてリラ。


「今日特に世話になったからな、三人には。改めて礼をと思って」

「そうだな。リラは、控室にも来てくれたんだぞ!」

「ふふ…お前たちは、仲が良いからな。
 それに、マルコシアス殿には介添人、咲耶殿には司祭と、大変な事を
 頼んだのに嫌な顔一つせずに、快く受け入れてくれた」

「そうだよな…よし。私も手紙を書こう!便箋とペンを貸してくれ」

「ふふ…そうか。ほら、これを使え」

「有難う。よし…」


そうして、晴れて夫婦となった2人の部屋では、
カリカリとペンの進む音が響いていた。

感謝の気持ち。それは妻に対してのみでなく、他の全ての人に対して、持つべきもの。
それを知っている2人だからこそ、咲耶は式辞を述べる際に、
『お二人ならば、問題はないと思いますが』と付け加えたのだろう。

良き友と、良き伴侶に恵まれ。
これからも2人は、共に手を取り合って、ブリアティルトを歩み続ける。


                      魔女の青汁様より。式のワンシーン。
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