狼牙志士隊の日誌

イズレーン皇国所属・狼牙志士隊の日誌

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背中合わせ

最近狼厳くんが戦闘するSS書いてなかったので、久々に( ゚Д゚)
文才が欲しいです安西先生_(┐「ε:)_





小鳥の囀りと、微かな風に揺られた木々の葉擦れの音。
清涼感を感じさせる、川の流れる音。

イズレーン皇国の豊かな自然の中で奏でられる音楽。
何処か神秘的で、幻想的な、そんな風景。

それらは、唐突に響いた一発の銃声によって、一瞬にして崩れ去った。


【背中合わせ】


銃弾が狙ったのは、白銀の長髪を赤いリボンで束ねた、赤い瞳の少女。
色素の薄い肌と、息を呑むような美貌と整ったスタイルを併せ持つ事を除けば、
一見すると普通の少女だ。

彼女の名は正宗。
外見からは想像もできないが、帝国に本拠を置く裏組織『トライアド』の長であり、
雷華という精霊を駆使して戦う、優れた術師でもある。

職業柄、敵も多い。
こうして狙われる事は日常茶飯事…というのは言い過ぎだが、
決して珍しい事ではない。


「…何者だ」


銃弾が放たれた方角を睨み、そう声を発したのは、
正宗と同じ髪型をした黒髪の偉丈夫。
とっさに正宗を抱き寄せて凶弾から守ったこの男は、名を狼厳といった。

狼牙一刀流と称する、一撃必殺を旨とした剣技の使い手であり、
国内外にそれ相応に名の知れた剣豪である。
加えて、正宗とは先日夫婦の契りを結んだ仲でもある。


「…離せ、狼厳。あの程度の殺気、ボクも感じ取れていた」


追撃がないのを確認し、狼厳の胸に庇われていた正宗も、
すっと体を離してから魔力を放出させる。
バチバチ…と大きく音がして、彼女の体を雷が覆うや否や、
白い手袋に覆われた指先を弾丸の跳んできた方角に向けた。


「雷華、やれ」


短く、そう告げる。
精霊と契約している彼女にとって、呪文の詠唱などなくとも雷撃は放てる。
敵を倒す。ただ、その意思さえあれば良い。

声と同時に放たれた雷撃は、森の自然を傷付けることもなく、
正確に襲撃してきた男のみを貫いた。


『がっ…!』


短い悲鳴と共に、茂みの中に潜んでいた男が倒れ込んだ。
苦しげに呻いている所を見るに、息はあるようだ。
しかし、戦闘能力は奪われたと見て良いだろう。

一人が倒れたのを合図に、刺客は一斉に姿を現した。
前方に3人。後方に3人。

正確無比な雷撃を誇る正宗に遠距離攻撃は不利と踏んでいたのか、
銃火器を所持していたのは、先程倒した一人だったらしい。
他の者は皆、それぞれに剣や槍など、近距離での戦闘を視野に入れた
武器を持っていた。


「これだけいると、流石に面倒くさいな。狼厳、獲物を分けてやる。
 ボクの背中は任せる」


が、正宗は動じない。
慣れた仕草で狼厳と背中を預け合うようにして立ち、
正面の敵に狙いを定めた。

一方の狼厳も、普段とはまるで違う…
それこそ、普段見知っている人が見れば別人と見紛うのではないかと
思うほどに、冷徹な顔で刺客を見据えていた。


「…貴様らは、狼の尾を踏んだ。覚悟してもらおう」


そう言い放つと、愛刀の天羽々斬を抜き、ゆっくりとした動作で上段に構える。

刺客は、動かない。…否、動けなかった。
一歩でも間合いに入れば、着込んできた防刃着ごと、文字通り真っ二つだろう。
裏世界に身を置き、長い間刺客として生き抜いてきた彼らの経験が、
そう告げていた。


『…覚悟』


だが、それでも彼らは任務を全うするほかない。
ここで死ぬか、逃げ帰って殺されるか。
刺客である彼らには、どのみち死が待っているのだ。

刺客の一人が無感情に呟いた言葉を皮切りに、ほぼ同時に、全ての刺客が動く。

正宗に対する刺客は、一息に距離を詰めて雷撃が届く前に討ち取る算段のようだ。
途中幾人か討たれるのも覚悟の上。そのような意図の見える、特攻。

しかし。


「契約の下、我が手に宿れ。雷華!」


先程とは桁違いの魔力。
目が眩むほどの雷を宿した左手を横に一薙ぎ。
それだけで、事は済んだ。

迸る雷撃は、玉砕覚悟の特攻を仕掛けた刺客をまとめて撃ち抜いた。
正宗は倒れた刺客を一瞥すると、左手を軽く撫でてふぅ、と小さく息を吐いた。



狼厳は、正宗とは違って広範囲に攻撃を展開する事は出来ない。
魔力はほとんど無く、武器も刀。
本来であれば、一対一で戦うのが理想的だ。

しかし、ここは乱世。一対一など、むしろ稀だ。
にも関わらず、狼厳はここまで生き抜いてきた。


「おおぉぉぉぉぉっ!」


一斉に突撃してくる刺客に、狼厳は気勢をあげて斬りかかる。
狼厳の右から突撃をかけた刺客の持った槍が、ガギィン!と
耳障りな金属音をたてて叩き落され、地面に突き刺さる。

その間隙を縫って、狼厳を仕留めようと振るわれた刺客の刃は、
しかし彼に届くことはなかった。

狼厳の右下方に振り下ろされた刃は、刺客の刃が届くよりも早く、
左へと切り返されていた。
その一振りが、刺客三人をまとめて叩き斬っていたのだ。

狼牙一閃。
サガ・ソウゲンら数々の剣豪の教えを受け、戦場で駆使し、
昇華させていった、狼厳の技の一つだ。

常人であれば、一人斬った時点で刀が止まったであろう。
普通の刀であれば、このような力業に耐え切れずに折れてしまっていたであろう。

しかし、今回刺客が相対したのは、名刀・天羽々斬を手にした、豪腕で知られる狼厳。
それが、彼らにとっての不運だった。







「…やれやれ…今回は、驚かされたな」

「まったくだ。結局、何処の組織の刺客かも分からなかったしな」


あの後、生き残った一人から情報を得ようとしたのだが、
声をかけると同時に、意識を失った。
息を引き取ったのではなく、魔力の供給を断たれたのであろう。
その直後に、ボロボロと崩れ落ち、砂となって消えた。

正宗が言うには、彼らは俗に『魔導人形』や『魔導兵士』と称される、
人ならざる者であった。
こうした技術は帝国発祥のものではあるが、昨今ではこうした兵器の
裏取引は少なくないため、帝国からの刺客だと断定はできない。


「一応、組織のほうでも調査はさせておこう。
 すまなかったな、狼厳」


情報が何もないから、特定は難しいかも知れないが、と付け加える正宗。
平静を装ってはいるが、狼厳を巻き込んでしまった事に対する罪悪感を
密かに感じている様子だった。
外ではそれを表に出す事はしないが。

あくまで、外では組織の長として、威厳ある姿を。
それが正宗の基本のスタンスである。

しかし、狼厳はそれを見抜いた上で、小さく笑って正宗の頭を撫でた。


「気に病むな。木偶に遅れを取る俺ではない。
 それに…妻を守るのは、夫の役目だろう?」


彼にとっては、正宗は組織の長である以前に、妻であり、
愛しい女性であり、守るべき対象である。

普段ならば外でこのような台詞を吐けば、雷撃を食らうのが常であるが、
周りに人がいないのが幸いしたか、あるいは正宗にとって嬉しい言葉であったのか。


「…うん。…その…た、頼りに…してるぞ…」


小声でそう言って、自らぎゅっと狼厳の手を握る。
一瞬驚いた狼厳だったが、その手を優しく握り返し、


「ああ。任せておけ」


と、優しく微笑んで言った。
そうして、狼厳と正宗は、先程までの戦闘などなかったかのように、
手を繋いだまま皆の待つ屋敷へと帰って行ったのだった。


「狼厳、運動したらお腹が空いた。お汁粉が食べたい」

「…さっき団子を食べたばかりでは…それに運動と言うほど動いてないだろう?」

「何を言う!お団子とお汁粉は違うんだぞ!」


そんな他愛ない会話が、シンと静まった森の中を賑わせていた。
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