狼牙志士隊の日誌

イズレーン皇国所属・狼牙志士隊の日誌

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

狼厳と正宗の馴れ初め-2

前回の続きであります(゚д゚)





楼華達に頼まれて、俺と正宗の馴れ初めを話す事になった俺は、
まず自分が正宗に惹かれ始めた時の事を話した。

しかし、それで満足しなかった楼華は、
互いが好意に気づいた瞬間について尋ねてきた。
正宗がいつ俺に好意を抱いてくれたのかは分からない。

だから俺は、自分が正宗に惚れていると
気付いた瞬間について話し始めた。



【狼厳と正宗の馴れ初め-2】



少し肌寒い、冬の日の事だった。
餡蜜を初めて食べてから、およそ数ヶ月。
その頃には、イズレーンの菓子が気に入ったらしい正宗を、
互いの空いた時間に待ち合わせ、甘味処に連れて行くようになっていた。

その日も最近出来たお汁粉の美味い店に案内する約束になっていたが、
間の悪い事に正宗を狙う敵対組織の刺客が、国境付近で
合流する時を狙って押し寄せてきたのだ。

俺は光明之太刀を振るって敵を迎え撃ち、
正宗はいつものように膨大な魔力を駆使した雷撃で
敵組織の刺客を一掃していく。

結局、さほど時間もかからずに、敵を一掃する事は出来た。


「流石だな、正宗。最近ますます魔力に磨きが…」


こちらも片付け終え、正宗にそう声をかけながら振り向いた。
すると、正宗は元々色白な顔を蒼白に染め、ふらっと
倒れそうになっていた。

俺は咄嗟に正宗の元に駆け寄り、倒れそうな正宗を抱きとめた。


「おい、正宗!?どうした、しっかりしろ!」

「…ぅ…はぁ…はぁ…」


顔色が悪い。素人目にもそれは明らかだった。
抱きとめた体は異様に熱を帯びていて、俺は一瞬
病気の類を疑ったが、ほんの十数分前までは元気そうにしていた。

とにかく、横になれる場所に連れて行こう。
そう考えた俺は、正宗を抱きかかえて近くの小屋に連れて行った。
旅人の休憩用に作られた小屋で、近くには透き通った泉もある。
当然寝具の類も備えてあるので、休ませるにはうってつけだ。


とりあえず布団を敷き、寝かせてから泉の水で手拭を濡らし、
額に乗せてやった。
だが、やはり辛そうなのは変わらない。
それどころか、時間が経つにつれて悪化している気さえする。
今思えば相当に動揺していたのだろう、診療所に連れて行くという
選択肢を考え付く余裕すら失われていた。

手拭をこまめに交換してやりながら、正宗の顔を見る。
普段は凛とした美しい顔が苦悶に歪んでいて、ひどく胸が痛んだ。


「原因さえ分かれば…対処法さえ分かれば、俺に出来る事なら
 何でもするというのに…」


自身の無力・無知が呪わしい。
そんな思いが、つい口に出てしまった。


『随分とうちの主にご執心じゃのぅ、若造?』


不意に、妙齢の女の声が聞こえた。
バチンと小さく雷が正宗の頭上で弾けたかと思うと、
そこには先程の声の主と思しき女性がふわふわと浮かんでいた。

精霊の類であろう。一目見て、それは分かった。
この女は、正宗を主と呼んでいた。
そして、正宗がいつも雷撃を放つ際に口にしていた台詞から、
俺は彼女の正体に気付いた。


「…お前が雷華か」

『ほぅ、存外察しが良いではないか。
 そうじゃ、ワシが雷華。正宗と契約した者じゃ。
 …っと、自己紹介などしてる場合ではないのぅ』

「お前には分かるのか、正宗がこうなっている原因が」


主である正宗がこの状態であるというのに、この落ち着きよう。
精霊は主に忠実なものと聞いている。
ならば、何か対処法があるに違いない。


『無論じゃ。膨大な魔力が体に負荷をかけているのであろう。
 一時的に魔力を封印したら、症状自体は改善する。
 その間に魔力の制御を主に身に着けさせれば、元通りになる。しかし…』

「そうか…ならば、すぐにでも魔力を!」

『話は最後まで聞かんか。主は魔力を武器に戦っておる。
 それがなくなるという事が何を意味するか…分かるであろう。
 職業柄敵の多い子じゃ。あっという間に殺されてしまうぞぃ』


雷華はそう言って、真剣な顔で正宗を見た。


『故に、どうするべきかワシも悩んでおる。
 組織には腕利きも多いが、すべてをカバーは出来まい。
 力が戻るまでの間、何処かに身を隠せれば良いのじゃが…。
 頼るべき伝手は全てこの子の縁者。いつ足がついてもおかしくない』

「ならば、俺の所に来れば良かろう」


俺がそう言うと、雷華は驚いたように目を見開き、
次いで殺気に満ちた目で俺を見据えた。


『…何の冗談じゃ。仮にも他国の将である貴様のもとに、
 主を匿うなどと。貴様が主を地位や保身のために売らぬ保証など、
 何処にもあるまい。ふざけた口をたたくな、小童が!』

「そのような真似はしない」

『信用できぬ』

「俺の身命に賭して、誓う」


そして、訪れた重い沈黙。
ピリピリと肌を刺すような、値踏みをするような鋭い視線。
やがて、肌を刺す気配が少し和らいだと思うと、ふぅ、と
小さく息を吐いて雷華は口を開いた。


『…問おう。貴様、何故そこまでする?
 元は主は貴様の敵。今も共闘することはあれど、
 所詮は利害が一致しているからに過ぎぬ。
 身命に賭してまで我が主を守ろうとするのは、何故だ』


その問いに対する答えは、既に俺の中にあった。
それを口にするのに、若干の躊躇いもない。

正宗が倒れた時、このまま意識が戻らなければどうしよう、と考えた。
そして、頭に浮かんできたのは、今までの思い出。


共に戦う時の、凛とした姿。
甘味に舌鼓を打つ時の、無邪気な姿。
夜の帰り道、墓地を通る際に少し怯えている姿。

ふとした時に見せる微笑んだ顔。
少しむっとした顔。
照れ隠しに眉間に皺を寄せた顔。

それら全てが、愛おしかった。

俺は正宗に惚れている。
その時に、そう確信したのだ。


「惚れた女を護るのに、理由など不要であろう」


雷華をまっすぐに見据えて言った俺を見、先程までの
殺気をすっかりと消し、クックッと小さく肩を揺らして笑った。


『何とも愚直な。…しかし、面白い男よ。
 ワシが決定を下すことは出来ぬ。どうするかは主に聞くが良い。
 …魔力の一時封印は先程済ませておいた。
 もう起きておるだろう、正宗。狸寝入りは程々にせよ』

「…ぅ…」


雷華の言葉に、正宗がゆっくりと身を起こす。
心なしかまだ顔は赤いが、起き上がった事に俺は安堵し、
思わず正宗を強く抱きしめていた。


「正宗…!良かった、気が付いたか。心配したぞ」

「あ…う、うん。…すま、ない。心配、かけて…」

『…見てられんのぅ。ワシは散歩に行っておる。
 ちと声をかけておかねばならん者もおるしな。
 用事が済んだら呼べ、主』


雷華はわざとらしくため息を吐き、ふわふわと何処かに
飛び去っていった。
その彼女を見送ることもせず、俺は正宗を抱きしめ続けていた。


「…その、狼厳。…少し、苦しいぞ」

「…と、すまん、つい力が入ってしまった。
 ……正宗。先程の話は、聞いていたな?」

「…ああ」

「改めて言うぞ」


そう言って、俺は正宗をそっと離して、肩に手を置いた。
そして、微かに潤んだ真紅の瞳を見つめながら、言った。


「俺の女になれ、正宗。幸せにしてやるとは言い切れぬが、
 この俺の身命を賭して、生涯護り抜いてみせる」

「ぇ、あ…う、えっと…その……。…う、うん…なる」


真っ赤になってしまった正宗の顔。
俺も恐らく赤くなっていただろう。頬が熱かったのは記憶している。
そして、そのままギュッと、再び正宗を抱きしめた。


「…狼厳。…私の、本当の名は――」







「…そういうわけで、俺と正宗は恋仲になり、現在に至る」


話していて、我ながらなかなかに恥ずかしい事を言ったものだと
思ったが、無論後悔はしていない。
こうして隣に正宗がいる今を得られたのだから。


「なるほど…。ふふ、良い話を聞かせて頂きました。
 狼厳さん、ありがとうございました」

「仲の良い事だ」

『ゴブ知ってるごぶ!こーいうのを赤い糸っていうごぶ!』


話を聞き終えた三人は三者三様の反応を見せる。
そろそろ時間も良い時間。話をそこで切り上げて、俺達は
それぞれの部屋に戻ることにした。


「…さて、そろそろ眠るか、××」

「まったく、恥ずかしい話ばかりして…。
 雷華も、影で聞いて笑ってるんじゃない!」

『くく…いや、すまぬすまぬ。あれからかなり経つが、
 主も随分変わったのぅ。それも、この小童のおかげか』


雷華もあれから、正宗と共に俺の屋敷に来ている。
魔力を封印した後、レイカという友人の精霊を伴い、
正宗の魔力制御の訓練に付き合って、そのまま居着いてしまった。


「ええい、うるさい!もう寝るぞ、寝る!」


正宗は真っ赤になって布団をぼふっと頭からかぶった。
こうした顔を見せるようになったのも、変化の1つだ。
雷華は正宗をからかって満足したのか、
ふらふらと別の場所に飛んでいった。


「…お休み、××」


告白した時、正宗が俺に教えてくれた本当の名。
それを教える相手には、自分の運命を預けるという意味があるのだと、
その後暫くして人伝に聞いた。

いつの間にか、俺の人生にとってなくてはならない存在となった正宗。
俺の運命も、無論彼女に預けてある。

互いの想いを確かめ合った過去を思い出し、
こうして共に眠れる現在を大切にしつつ、
これから訪れるであろう二人の未来に思いを馳せる。

これが人を愛するという事なのだな、などと考えながら、
俺は正宗を腕の中に抱き寄せて、眠りに落ちた。
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

ご案内

プロフィール

狼厳

Author:狼厳
狼牙志士隊筆頭

最新記事

くろックCute BC01

カレンダー

06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。