狼牙志士隊の日誌

イズレーン皇国所属・狼牙志士隊の日誌

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夏祭り

ちょこっと甘めのSSを目指しました(゚д゚)

刻碑暦がバレンタインなので、それに合わせて急ごしらえ…
駄文です(´・ω・`)




今夜はイズレーン皇国、年に一度の夏祭り。
首都イズルミを挙げての盛大な祭りだ。


『これがイズルミの祭りか…』


俺の隣で、正宗が辺りをキョロキョロ見回しながら呟いた。
楼華に着付けをして貰ったらしい、黒色の生地に桔梗の花の
刺繍が施された浴衣。

普段とは違う正宗の姿に、こういった格好も
似合うのだなと新鮮な感覚を覚えながら、俺は正宗の
腰をぐっと抱き寄せた。


「あまり離れると、この人混みで迷子になると事だぞ」


尤もらしく囁けば、顔を微かに赤くして睨んできた
正宗も、大人しくそのまま俺に身を寄せた。


【夏祭り】


『…ボクはこうした催しに来るのは初めてだ。
 なぁ、狼厳。あの店では何を扱っているんだ?』


物珍しそうに辺りを見ていた正宗の目が、ある出店にぴたりと止まる。
そちらのほうを見てみると、りんご飴を売っている出店だった。


「…食べてみるか?」

『え、あ、いや…。…ま、まあ、食べてみても良い、な』


一瞬躊躇したのは、周囲でりんご飴を食べているのには
子供が多かったためか。

屋敷の中では俺の膝の上でアイスを頬張ったりするのに、
外だと体裁を気にするのは、やはり組織の長たる自覚だろう。
そうした所も可愛らしいものだと小さく笑うと、
ムッとした様子で睨まれた。


『…何を笑っている』

「いや、何でもない。では、頂くとするか。
 …店主、すまない。りんご飴を2つ、頂けるかな?」


正宗の問い掛けを受け流して店主にりんご飴を2人分頼み、
代金を手渡す。
1つを俺が、見本を見せるようにして食べながら、
もう1つを正宗に差し出す。


『あ、有難う』


それを受け取ると、俺がしているようにして、
正宗もりんご飴を食べ始めた。
俺がこれを口にするのは、実に十数年ぶりだ。

昔、父が存命だった頃、頼み込んで連れて行って貰った縁日で、
これを食べたのを今も覚えている。

あの頃は随分と美味く感じたものだが、今こうして食べると、
口が贅沢に慣れたのか…美味くも不味くもなく、普通だ。


(懐かしい味ではあるが…)


そんな感傷に浸りつつりんご飴を食べる。
ふと、横目に正宗を見れば、物珍しそうにしながらも
黙々と飴を舐め続けていた。

口の周りがべたべたにならないように配慮している辺りは、
流石と言うべきか。


「美味いか?」

『うん…新鮮な味だな。りんごをこういう風にして
 食べるとは…』


近場の椅子に腰掛け、りんご飴を堪能してから、
今度はあっち、次はこっちと、祭りの空気に少し馴染んだらしい
正宗に連れられ、色々な出店を回る。

綿飴、やきそば、たこ焼き。
それらを食べたら、アイスクリームをデザートに。
普段組織で料理人が作ったものばかり口にしている正宗には、
どれも新鮮なものだったらしく、喜んでいるのが
一目で分かった。

本人は冷静に振舞っているつもりなのだろうが、
こういう時だけは、年相応の女の子なのだな、と実感する。





『ふう…もうお腹一杯だ…』

「あれだけ食えば、そうだろうな。大丈夫か、正宗?」


普段さほど大食でもない正宗にしては、
祭りの中で色々と食べて回っていた。
俺はまだ腹一分にも達していないが、あまり食いすぎると
屋敷に戻ってから食事を抜かれる恐れがあるので自重している。


『大丈夫だ。初めて食べるものばかりだったから…
 つい、羽目を外してしまった』

「ふふ、楽しんで貰えて何よりだ。…と、そうだ。
 何か飲み物でもいるか?」

『あ、そうだな…オレンジジュースとか、あるかな?』

「先程の出店の近くで見かけた気がするな。
 買ってこよう。正宗はここで休んでいると良い」

『うん、分かった。有難う、狼厳』


祭りも一段落した。後は花火があるくらいか。
それを見るなら、近くの高台が良いだろう。
そんな事を考えながら、俺はジュースを買いに向かった。







(……弱ったな)


オレンジジュースの入った紙コップを両手に持ち、
俺は表情は変えずに心のうちで溜息を吐いた。

ジュースを買って戻ろうとしている時に、女性とぶつかった。
幸いジュースはこぼさずにすんだが、問題はそれからだ。

その女性はどうやら俺を知っていたらしく、
彼女の連れの2人の女性と波状攻撃を仕掛けるように、
俺を質問攻めにしてきたのだ。

一刻も早く正宗のもとに戻りたいのだが、彼女らも皇国の民。
無碍にするわけにもいかず、足止めを食らってしまっていた。


(あいつは、意外とやきもち焼きだからな…)


本人に言えば、そんな事はないと否定するだろう。
しかし、俺が他の女性などと話していると、
傍から見ても明らかなくらい機嫌が悪くなる。
酷いときは雷を落とされるので、注意が必要だ。

…もっとも、そんな姿も可愛いので、時折わざと
妬かせたりしてしまう俺も俺だとは思うが。


『………』

「あ」


そんな事を考えていると、人混みの向こうに、ジト目で
こちらを睨む正宗の姿を見つけた。

俺と視線が合うと、正宗はクルリと踵を返し、
人混みを器用に避けながら俺から遠ざかっていく。


「すまない、少し急ぐのだ。これで失礼する」


俺は、まだ何か問いかけたいらしい女性達の言葉を遮り、
ジュースをこぼさないように気をつけながら、正宗の後を追う。

歩幅が違うので、そう離されずに、すぐ追いつく事が出来た。


「正宗、すまなかった。…機嫌を直せ」

『……』

「…正宗」

『…………』

「…××」

『…!!』


何度か呼びかけても無視されたので、小さく溜息をついてから、
俺は耳元で正宗の本名を呼んだ。
すると、ビクッと反応を示して立ち止まり、
キッと俺を睨みつけた。


『…その名を外で呼ぶな、バカ』

「すまん。そうでも言わねば、止まらなかっただろう?」

『ふん』


少し拗ねた様子の正宗に肩を竦め、ジュースを差し出す。
それを無言で受け取って一口飲んでから、正宗は小さく口を開いた。


『…お前は、私のなんだからな』


小さな声ではあったが、すぐ隣にいる俺には聞こえた。
思わず抱きしめてやりたくなったが、外で抱きしめると
後々怒られるので自重した。

…すると、ジュースを持っていない俺の右腕に、
正宗が自身の左腕を絡ませてきた。
普段はこういう事をするのは恥ずかしがるのだが。


『何をニヤニヤしている』

「いや、何でも。…可愛いな、お前は」

『~~…可愛いとか言うな、バカ。
 …ほら、行くぞ。花火があるんだろう?
 それまでにもっと色々と見てみたい』


俺の腕にギュッとしがみつく正宗。
辺りから視線は感じるが、見たい者には見せておこう。
俺は彼女のものであり、彼女もまた、俺のものなのだから。



…こうして、イズルミの祭りの夜は更けていった。
2人で眺めた花火は、それまでとはまた違った輝きを
放っているように思えた。
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