狼牙志士隊の日誌

イズレーン皇国所属・狼牙志士隊の日誌

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天羽々斬・後日

刀を手にした狼厳くん。
その後日譚であります(゚д゚)

ちょっとだけ甘い要素ありです、要注意!




ラドゥーンを討伐してから三日後の朝。
長く意識を失っていた狼厳が、ようやく目を覚ました。
医務室に運ばれて来た時は重傷ではあったが、
天羽々斬の霊力を受け入れたからか、多少傷の治りが早い。

この調子ならあと二週間も安静にしていれば退院できるだろう、と
医師から告げられ、病室に集まった一同はホッと安堵の息を漏らした。


【天羽々斬・その後】


「まったく…無茶をするなと、あれほど言っただろうに!」


院内食を瞬く間に平らげてベッドで一息つく狼厳に、セルヴィスが
先日のラドゥーンとの戦いでの狼厳の振る舞いを攻める。
普段であればフォローに回る楼華も、今回ばかりは
少し怒っているのか、眉間に皺を寄せてセルヴィスに追従する。


「そうですよ!ナギさん達を呼んでくるまでの間、
 上手く逃げて時間を稼ぐ、って狼厳さん言ってたじゃないですか!
 なのに、正面から挑んでたなんて…!」


そう、狼厳は彼女らを逃がす際、自分が囮になって逃げ回り、
時間を稼ぐから援軍を呼んできて欲しい、と嘘をついた。
元々狼厳は逃げるつもりなどなかった。


「…しかし、敵に背を向けるわけには…」


愚直なまでに武人である狼厳は、敵から逃げる事を潔しとしない。

味方や友に対しては命を最優先して欲しいと願う反面、
自身は何処か強敵との戦いを渇望し、それによって命を落とす事も
本望とすら考えている。

だが、今の狼厳がその考え方を未だ持っている事が、
楼華もセルヴィスも許せなかった。


「今の貴様の命は、言い方は変だが、貴様一人の命ではないのだぞ」

「そうです。私達も勿論ですけれど…もっと悲しむ人が、いるでしょう?」


そう、狼厳には今、恋仲の女性がいるのだ。
未だ若い彼女を残して死ぬなど、少なくとも二人には
許せなかった。


「まぁ、そう言ってやるな。狼厳も無事だったのだからな」


見かねたウォルフガルドが苦笑混じりに助け舟を出すと、
2人も内心では、怒りよりも安堵が勝っているのか、
それ以上の追求は止めた。

と、そんな事を話していると、コンコン…と医務室の戸を叩く音がした。

ウォルフガルドが戸を開けると、沢山の花が活けられた花瓶を
抱えた小柄な影が、中に入ってきた。




『ただいまごぶー。お水替えてきたごぶ』


ラドゥーンとの戦いの前に狼厳にポーションを与え、
負傷した後に薬草で手当てをした、あのゴブリンである。
楼華やセルヴィス・ウォルフガルドの働きかけと、
本人の愛嬌の良さも相まって、あの一件以来
狼牙志士隊の宿舎の同居ゴブリンとして、町でも広く
受け入れられていた。


「お帰り、ゴブ吉。蛇口に手は届いたか?」

『よゆーごぶ!』


セルヴィスが同居ゴブリン改め、ゴブ吉(狼厳命名)から
花瓶を受け取り、狼厳の枕元に飾る。
ほんのりと甘い香りが室内を漂い、心を和らがせた。


「良い香りだな」

「皆様にお礼を言っておかないと…。
 お見舞いに、沢山のお花や果物を頂きましたから」

「ああ。退院したら、お礼に行くとしよう」


そんな話をしていると、廊下にタッタッタッと、
誰かが走っている音がした。


『病院内で走っては駄目ですよー』


と、看護師が注意する声に、


『すまない、急いでいるんだ。以後気をつける』


と、止まる様子もなく答える声。
その声は、狼牙志士隊の一行にとっても、
無論狼厳にとっても聞き覚えのある声だった。

その声の主は部屋の前に来ると、
一瞬立ち止まってから戸を開けた。


『…狼厳、怪我をしたらしいな』


美しい銀の長髪に、真紅の瞳の少女―正宗が、
狼厳を見下すようにして言い放つ。
その様子に、狼厳は苦笑して肩を竦めた。


「ご覧の通りだ。無様だろう?」

『全くだ。油断しているから悪い。
 そんな事ではボクと再戦したところで、
 勝負にもならないぞ』


2人のそんなやり取りを、楼華は笑うのを堪えて、
セルヴィスは呆れたように、ウォルフガルドは意地の悪い笑みを
狼厳に向けながら見守る。
唯一場の空気を理解していないゴブ吉は、喧嘩のような
やり取りをする2人を心配そうに見守っていた。


「…で、では、私達は…さ、先に帰っていますね…ふふ」


最後のほうで堪えきれずに笑ってしまったようだったが、
楼華がそう言って、皆を連れて部屋から出て行く。
ゴブ吉が心配そうにしていたが、楼華達が上手く説明するだろう。


皆が去った部屋で、2人きりになると狼厳が正宗を手招きした。
正宗はそれに黙って従うと、ベッドのすぐ脇にあった椅子に腰掛けた。

近くに来た正宗の頭を、狼厳の大きな手がぽんと撫でる。


「心配をさせたな」

『…このバカ…。無茶をするのはやめろって
 いつも言ってるだろ…!』

「すまん。あの場であれを食い止められるのが、
 俺くらいしかいなかったものでな」

『…分かってる。けど、それでも文句の1つも言いたくなる!』

「悪かった。今度、みたらし団子を持って行ってやるから
 機嫌を直してくれ、な?」

『…なら、特別に許す』


途端に雰囲気が和らぎ、そんな話を始める2人。
先程の喧嘩のようなやり取りは、正宗の裏組織の長たる
威厳を保つための偽装工作である。

もっとも、楼華達は見慣れているため、
その真意など知っているのだが。


「しかし、随分と早かったな。そんなに俺が心配だったか?」


帝国からここに3日で到着するには、余程馬を
早く走らせねば無理であろう。
狼厳はある程度、正宗が早く来た理由を察しながらも、
ニヤリとからかうように笑って尋ねた。


『ち、違う…。ミリアが3日前に教えてくれたんだ。
 狼厳が入院したらしい、って』


狼厳の言葉に微かに頬を染めて、正宗が答えた。

ミリアというのは、正宗の専属のメイドだ。
戦闘の腕前も確かなものであり、正宗を深く敬愛している。
そのため、狼厳の事を目の敵にしており、事あるごとに
喧嘩をしている女性だ。


「なるほど…」

『…でも、安心した。とりあえず、大丈夫そうだな』

「ああ。早く治して、鍛錬を再開しないとならんしな。
 あの刀の力をもっと引き出すには、今の俺では力不足だ」

『また鍛錬か…。少しは体を大事にしろ、バカ。
 …あまり…私を心配させるな…』


最後の言葉は小さく、けれど狼厳の耳にはしっかり届いた。
ふっと小さく笑うと、狼厳の手がわしわしと正宗の頭を撫でた。


「そうだな。安心しろ、鍛錬は完治してからだ。
 …さて、折角来てくれたのだ。今日はゆっくりしていけ」

『ああ、そのつもりだ。ミリアやねえさまも、
 今日はゆっくりしてきて良いと言ってくれたからな』


珍しい事もあるものだ、と呟きながら、狼厳は
お見舞いに持ってきて貰った種無し葡萄を2つ手に取ると、
正宗に1つ手渡し、もう1つを自分で食べ始めた。







『仲良しごぶー…』

「ね?あの2人は、人前ではいつもああなんですよ」

「…隠し切れている、と思っているのか否かは定かではないが」


一方、室内の様子をこっそりと窺っていたゴブ吉と楼華・セルヴィスは、
口々に感想を漏らす。
狼厳は恐らく気付いているだろうが、正宗は気付いていないようだ。
普段であれば気配には聡い子なのだが。


「…ほら、3人とも。そろそろ戻るぞ。
 狼厳が不在の間の任務は、儂らで片付けておかねば」


一方、少し離れて、悪戯をする孫を見守るような顔をしていた
ウォルフガルドは、3人にそう声をかけた。
その声に反応し、3人は扉から離れて、帰路に就く。


…その後、狼厳のベッドで一緒に正宗が眠っていて、
看護師に説教を食らったのは、また別の話だ。
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Comment

NoTitle 

(∩・ω・)∩<お届けものでーす!
(ノシ・ω・)ノシ 三 [強力爆弾]

やっぱりゴブ吉が可愛くて仕方ない!
そしてカップルいいですなぁ・・・
甘々な状況は読んでいてにやけてしまいます。
とりあえずもう一個投げつけておきますね
(ノシ・ω・)ノシ 三 [強力爆弾][強力爆弾][強力爆弾]
  • posted by 春風 
  • URL 
  • 2013.10/01 01:42分 
  • [Edit]
  • [Res]

NoTitle 

春風殿>
いらっしゃ…爆弾!?Σ(゜д゜lll)

ゴブ吉くんはマスコット風に考えております…
外見はダンジョンのより可愛らしいのですよ!(゚д゚)
…って、大量の爆弾がk(チュドーン
  • posted by 狸侍 
  • URL 
  • 2013.10/01 20:45分 
  • [Edit]
  • [Res]

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