狼牙志士隊の日誌

イズレーン皇国所属・狼牙志士隊の日誌

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天羽々斬・肆

最終話!
ちょっと駆け足に終わってしまいましたが、
こんな経緯で狼厳くんは剣を手にしました。

レオル君達がいなかったら死んでましたね!('、3)_ヽ)_

…早く剣完成させたいなぁ…

後日譚も一話書く予定!



『狼厳兄様、ひどい傷…!』


少し奥まった場所に行き、俺は近場の切り株に腰掛けた。
骨も何本かヒビでも入っているだろうし、裂傷もある。
特に出血のひどい場所に薬草を貼って一息つくと、
セリカ殿が泣きそうな顔で薬を持ってきてくれた。
恐らくレオル達が携帯していたものだろう。


「ありがとう、セリカ殿。大丈夫だ。
 この程度の傷、唾でもつけておけば治る」


頭を撫でようかと思ったが、手も血まみれなので
顔だけセリカ殿に向けて、微笑んでから言う。
虚勢なのはバレバレだろうけれど。



【天羽々斬・肆】



レオルとヴィンス殿は、巧みな連携で相手を翻弄しつつ、
確実にダメージを与えている。
流石にあの化け物も、首を一本失って体力を消耗しているのか、
動きが大分遅くなっているようだ。

とはいえ、あの巨体。
気を抜いたら危険なのは一目瞭然だが。


『…っと…!危ねぇ…な!』

『ヴィンス、無理はしないで。危なくなったら
 後退して良いからね?』

『冗談。まだまだ余裕さ』


次第に、ラドゥーンの攻撃も精度を増してきている。
レオル達の動きに慣れてきたのか、残る7本の首を使って、
退路を誘導しているように見えた。

セリカ殿が傷の酷い場所には、止血をして包帯を巻いてくれた。
痛みが消えたわけではないが、いつまでも2人に頼りきりという
わけにもいかない。

立ち上がって、体の状態を調べる。
手当てされる前と比べれば、目もしっかり見える。
足もふらつかないし、痛みも和らいだ。

短時間であれば、全力で動いても支障はないだろう。
そう考えて一歩踏み出すと、セリカ殿とゴブリンが驚いた様子で
俺に声をかけた。


『狼厳兄様、動いちゃダメだよ!今無理に動いたら、
 下手をしたら死んじゃうよ!?』

『ろーがん、無理するなごぶ!それに、刀もないのに
 どうやって戦うつもりごぶ?』

「刀がなくとも、囮くらいは出来る。
 いくらあの2人でも、あれと戦い続ければ疲弊もしよう。
 …なに、無理はせぬ。安心してくれ」


心配そうに言う2人に微笑んでから、一歩足を踏み出す。


『待って、狼厳兄様!』


すると、セリカ殿が突然大声で俺を呼び止めた。
思わず足を止めて振り返ると、セリカ殿が刀を抱えていた。

その刀は何やら異質な雰囲気を帯びていた。
しかし、決して不快ではない。

表現が難しいが…気心知れた友と会うような。
その刀を見た俺は、そんな感覚を覚えていた。


『これ、お兄ちゃんもヴィンス兄様も抜けなかったの。
 後でイズルミの人に渡して調べて貰おうって言ってたんだけど、
 狼厳兄様なら抜けるかも知れないと思って…』


差し出されたその刀を受け取る。
光明之太刀を収めていた鞘を外して岩に立て掛け、
かわりにその刀を腰に佩くと、また違う感覚を覚えた。

気心知れた友ではなく、頼もしい相棒に背を預けたような、
不思議な安心感。
柄に手をかけて少し力を込めれば、刀は容易に鞘から
その白銀に輝く美しい刀身を露にした。


『抜けた…!』

『きれーな刀ごぶー…』


その刀を、ぎゅっと握る。
長らく戦場を共に駆けてきた光明之太刀よりも、ずっと手に馴染む。


「…行ってくる」


刀の感触を確かめ、俺はラドゥーンに向けて駆け出した。
不思議と体の痛みは引いている。
そして何より、この刀と、レオル達がいれば、
あの化け物も恐るるに足りず。
そう思った。







『狼厳…もう大丈夫なの?』


駆け寄ってきた俺に、レオルが敵から視線を逸らさずに尋ねる。
その隣に立つヴィンス殿がチラリとこちらに視線を向け、
俺が握っている刀に気付いたらしく、ニッと笑った。


『抜けたのか』

「ああ。随分と手に馴染む。
 これがあれば、足手まといにはなるまい」

『二人とも、来るよ!』


レオルの言葉に、俺とヴィンス殿も視線を敵に向ける。
ラドゥーンの攻撃の精度が少し落ちている。
この刀を見て、動揺しているのか。


「…ふっ!」


伸びてきた首を躱し、その首に刀を振り下ろす。
すると、あれほど硬かったはずのラドゥーンの首が、
豆腐か何かのように軽々と切れた。

レオルとヴィンス殿も、確実に相手にダメージを与え、
敵の首を落としている。
これならば、勝てる。
そう確信し、今度は自分から攻勢に出た。






それから、一時間後。
手間取ったが、ラドゥーンの全ての首を落とす事に成功した。
全ての首を落とされたラドゥーンは、程無く絶命した。

それとほぼ同時に、楼華とセルヴィスが巫女武者隊を伴って
戻ってきた。


「狼厳、生きているか!?」

「狼厳さん!」


俺の姿を見つけた二人が駆け寄ってくる。
巫女武者たちは、巨大なラドゥーンの死体と近隣の調査に
それぞれ分かれて行動を開始したようだ。

それを見届けて、刀を鞘に収めたところで、
今までのダメージや疲労が一気に押し寄せてきた。
俺の意識は、そこで途切れた。









『幸い、狼厳は一命を取り留めたそうだ』


執政のソウマが医務室から現れ、狼厳の容態を
心配していた狼牙志士隊の一行にそう伝える。
張り詰めていた場の空気が、ホッと和らいだ。


『しかし、あの刀の封が解けるとはね。
 御伽噺か何かかと思っていたけど』

「あの刀は何なんですか?私達では、鞘から抜けも
 しませんでしたけれど」


狼厳が倒れた後、これが国の宝であろうと考えた
楼華達は、その刀をソウガに預けようとした。
しかし、鞘から刀を抜くことは誰にも出来なかった。


『あれは、天羽々斬。かつて、あのラドゥーンを弱らせ、
 封じる際に用いられた刀なんだ』

『まぁ、狼厳にしか抜けなくなってる以上、あの刀は
 あいつに任せるのが一番だろうな』


ソウマがあの刀…天羽々斬について解説していると、
軍議の間から出てきたソウガが、そう付け足した。


『兄さん。では…?』

『ああ。あの刀は、あの化け物退治の褒美も兼ねて、
 狼厳に正式に授与する事が決まった。
 あいつなら悪用なんてしないだろうからな』


…こうして、狼厳は長年の相棒である光明之太刀を失った。
そして同時に、新たなる相棒・名刀『天羽々斬』を手にしたのだった。
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