狼牙志士隊の日誌

イズレーン皇国所属・狼牙志士隊の日誌

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天羽々斬・参

第三話であります。

SSのほうが実物より先に完成してしまいそうだなぁ_(:3 」∠)_

そしてまたしてもご出演頂いてる方々が!
もう本当申し訳なく(土下座


耳を劈くような、ラドゥーンの勝利の咆哮。
それを朦朧とした意識の中、地面に倒れたまま聞きながら、
俺は自身の無力さを痛感していた。


【天羽々斬・参】


民が避難するくらいの時間は稼げただろう。
近くの里に既に人の気配はない。

だが、俺が逃れるだけの余力は、既にない。
ゴブリンから貰ったHPポーションは既に使い果たした。
2つは俺が、もう2つは戦闘開始から少ししてやって来た
楼華とセルヴィスに持たせた。

その楼華とセルヴィスには、イズルミに援軍を呼びに行くように頼んだ。
3人でかかっても、手も足も出なかったのだ。


とてつもなく硬い鱗に覆われた体は、光明之太刀でも、
カザネの力を宿した楼華の矢でも、アレシオスやフェアミソラでも、
傷を負わせる事が出来なかった。

これほどの時間粘れたのは、正直奇跡的とも言えるだろう。
霊力だけは高いようだが知性に乏しいらしいこのラドゥーンは、
俺を倒すまで律儀にこの場に留まってくれている。

もっと知性があれば、俺を放っておいてもっと大勢の
人間を喰らいに行くはずだ。
そうなれば、俺には打つ手がない。


(…こんな時…)


他の皆ならどうするだろう。
思えば、俺の力で守れたものの、何と少ない事か。
いつも俺は誰かに支えられ、力を貸して貰って勝ってきた。
それでも良いと、そう思っていた。

だが、今この時ばかりは、自身の無力が恨めしい。
結局俺は、一人では何も出来ないのだろうか。


(…あのお二方なら、この程度の苦境、笑って乗り切るのだろうな)


ふと、脳裏に俺が憧れる2人の剣士の姿がよぎる。
圧倒的な武力を以て戦場を駆ける姿に、俺は憧れた。
いつか肩を並べて戦える日を、夢に見ていた。


光明之太刀を地に突き刺し、それを杖にして立ち上がる。
それを見たラドゥーンが、余裕のつもりか、ジリジリと俺に歩み寄る。
恐怖心を煽ろうとしているようにも見えるが、無駄なことだ。


「…どうせ死ぬならば…最後に一矢、報いてくれる…!」


覚悟は決めた。
この化け物が相手だ、恐らくは生き残れまい。
ならばせめて、後にこいつを迎え撃つであろう皇国軍が
戦いやすいよう、手傷のひとつでも負わせる。
このまま無様に死ぬだけでは、あのお二方は勿論、
俺の戦友達や好敵手達に申し訳が立たない。

残る全ての力を腕に込め、刀を上段に構えた。
8つの首のうちの一本を、鋭い牙を剥き出しにして俺を
喰らおうと伸ばしてきた。

すんでのところでそれを回避し、伸びきった首に…
全力で刀を振り下ろした。


手応えが確かにあった。
首を刎ねるには至らなかったが…鱗が切り裂かれ、
紫色の血が噴水のように噴き出した。


長く続けた攻撃で、ようやくこいつの鱗も痛み始めてきたのだろう。
しかし、これならば勝てるなどと、期待を抱く暇もなく。


「ぐっ…!?」


先程斬り付けた首が、勢い良く俺の体に叩き付けられた。
軽々と吹き飛ばされ、岩に背を叩きつけられた。
一瞬目の前が真っ白になり、次いで背中に激痛が走る。

初めて傷を負わされて怒り狂っているのだろう、
目付きが先程よりも険しくなったように見える。

相手が再度攻撃してくる事は明白だった。
俺は刀を下段に構え、その攻撃を迎え撃つ事にする。


(もう刀を振り上げる力すらないか…)


自身の不甲斐なさに思わず苦笑してしまう。
そして、8本の首のうちの一本が俺に向かって伸びてくる。
その牙を叩き折ってやろうと刀を振るうが、
逆に刀を咥えられてしまった。

俺の手から光明之太刀は奪われ…そして。


ギャリギャリ、と耳障りな音を立てて、ラドゥーンに噛み砕かれた。
粉々になった刀をごくんと飲み干すと、再度、ラドゥーンの勝利の咆哮が轟く。


「…ここまでか」


刀を奪われた俺は、岩に完全にもたれかかった。

戦友や各国の友・強敵の事を思い返し、
短くも存外悪くない人生だった…と、瞳を閉じる。


だが。



『狼厳、こんな所で死ぬことは許さないからな』


正宗の声が聞こえた。

空耳であろう。こんなところにいるはずがないのだから。
だが確かに、聞こえた。

その声が、俺の心に渇を入れた。

そうだ、俺はまだ死んではいない。
最後の最後まで足掻き、戦い抜いてやろう。

不思議と、体にほんの少し力が戻った気がした。


「…来い、化け物…!」


ここは岩場。ギリギリで攻撃を回避すれば、岩に頭を
激突させられるかも知れない。
…とはいえ、岩など容易に砕いてしまう可能性のほうが高い。

それでも、何もせずに喰われるよりはマシだ。
俺は身構えて、相手の攻撃の瞬間を待った。


相手の首が一本俺に猛スピードで向かってくる。

足に力を込め、横に跳んで回避する準備をしていたが…
俺のもとに到達する前に、その首は高々と宙に舞った。


『狼厳…間に合って、良かった』


巨大な斧を携えた、赤髪の少年。
俺のすぐ脇にある小高い丘から飛び降りてきた彼の斧が、
ラドゥーンの首の一本を刎ねた。


「…レオル…」

『話は後にしよう。とりあえず今は、あの化け物を
 何とかしないと』


頼もしい友の姿に、一瞬緊張の糸が切れる。
よろけた俺の体を、別の方向から伸びてきた手が支えた。


『まさか、お前がこれほどやられるとはな。
 後は任せときな。レオルと俺で、援軍が来るまで
 持ちこたえるさ』


ヴィンス殿だった。
少し離れた場所に、ケルベロスに守られてセリカ殿もいる。
セリカ殿の陰から、3人を連れて来てくれたのだろう、
ゴブリンがこちらに駆け寄ってきた。


『ろーがん、こっちごぶ!とりあえず手当てするごぶ!』


小柄なゴブリンが、俺の足を引っ張る。
片方の手には薬草が何枚か握られていた。


「…すまない…少し休んだら、すぐに戻る…」


今の俺がいても邪魔にしかならない。
そう自覚していた俺は、レオル達にそう告げて
ゴブリンと共にセリカ殿がいる場所に向かった。


『ゆっくり休め。時間稼ぎくらい、どうってことない』

『狼厳を痛めつけたんだ…少し、仕返しさせて貰う…!』


2人の頼もしい言葉を背に聞きながら、俺は
ゴブリンから差し出された薬草を一枚、傷口に貼り付けた。
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Comment

NoTitle 

愛は無敵ですね(いきなり)

というか刀ァァァ!?
想像してたより壮絶な失い方をして驚愕しています←

友達を傷付けられたらキレちゃうから仕方ないね。
というか、既に首一本刎ねてるくせにさらに「仕返し」しようとするレオルにらしさを感じました(ぉ)
  • posted by X 
  • URL 
  • 2013.09/16 22:47分 
  • [Edit]
  • [Res]

NoTitle 

あ、あいつ刀バリムシャー!すんの…!(ガタガタ

(*´∀`)フフ、愛の力ってすごいなー(短剣片手に←
あとね、レオル君の斧で斬られるような事してはいけない。ってわかりました

ちょんぱ…!
  • posted by 皇帝 
  • URL 
  • 2013.09/17 02:20分 
  • [Edit]
  • [Res]

NoTitle 

X殿>
ムテキであります…!

光明之太刀は犠牲になったのです…
きっと美味しくはなかったはず(何

レオル君はきっと相手を倒すまでが仕返し、と
考えてそうだなぁと思ったのです!(`・ω・´)(ぉ

皇帝殿>
何気に山くらいの大きさらしいですからね、あの子!

ふふふ、愛は偉大…あれ、何故短剣を…!((( ;゚Д゚)))
レオル君はきっと怒ると怖いと思うのです(失礼
  • posted by 狸侍 
  • URL 
  • 2013.09/17 06:42分 
  • [Edit]
  • [Res]

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