狼牙志士隊の日誌

イズレーン皇国所属・狼牙志士隊の日誌

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狼厳と正宗・第一幕

帝国の正宗さんと狼厳くんが、恋仲ということになりました(゚д゚)

その出会いの一幕などをSSにてちまちまと…。
SS書く許可を下さってありがとうございます!(`・ω・´)



刻碑暦997年・4月。
麗らかな春の陽射しが屋敷を暖かく包み、
時折吹く春風は心地良く肌を撫ぜる。

その春風の中に、ほんのりと混ざった花の香りと、
シャンプーの香り。

それらを感じながら、俺はふと、昔の事を思い出す。

そういえば、【こいつ】と出会ったのも、こんな季節であったか…。


【狼厳と正宗・第一幕】


その頃…と言っても、刻碑暦ではさほど変わりがない。
分かりやすく言うなら、俺がこの世界に来て間もない頃の話だ。

当時の俺は、狼牙一刀流を名乗っておらず、力任せに刀を振るう
猪武者に過ぎなかった。

今は違うのか、と問われれば答えに窮するが、それはさて置く。


イズレーン皇国に兵士となったものの、任務と言えば魍魎退治と、
賊徒相手の遠征ぐらいのもの。

今にして思えば、未熟な俺に任せる仕事など少なかったのだろうが、
イズレーンの人々に受けた恩義に報いるためには、
もっと武勲を立てなくてはならない。
そんな風に考えていたのだ。


魍魎退治や遠征とて、民の危険を取り除く事もまた、
重要な任務なのだが…見知らぬ土地で焦っていたのもあったのか、
周囲の将らに休むよう促されるほど、俺は戦い続けていた。







「裏世界の組織が、イズレーンに?」


そんな折だった。
イズルミで、不穏な噂が流れ始めたのだ。
金さえ払えば市井の者であろうが役人であろうが消し、
常習性のある薬物…所謂、麻薬を取り扱う組織の噂。


『そうなんだよ。まあ、あくまでまだ噂なんだけどね。
 実際に事件が起きたわけじゃないけど…怖いよねぇ。
 ま、アタシは恨まれるような事はしてないつもりだけどさ』


その噂を聞かせてくれたのは、任務を終えたらよく立ち寄る
茶屋の女主人だった。
豪快に笑う彼女の声を聞きながら、俺は考えた。

現在は戦時。
他国との戦争も次第に激しさを増している。

噂程度でしかない情報に裂く余力などあるまい。

そう考えた俺は、団子の代金を支払うと、その足で組織とやらの調査を開始した。







難航するだろうと予想した調査だったが、思いのほかあっさりと
情報は手に入った。

明くる日の日の出前、イズレーンとヴァルトリエの国境付近にある廃倉庫で、
違法な薬物の取引が行われるという情報だ。

夜が更けるのを待ってからその倉庫に向かうと、
確かに何者かの気配を感じた。

気配を殺し、門の外で会話を盗み聞く。


『……けの…だ…』

『やは……あれは………だった…?』


距離が遠いことに加え、相手も小声で話しているため、
話の内容は聞き取れない。
もう少し近くで…そう思って少し動くと。


『そこにいるのは分かっている。出て来い』


凛とした、それでいて透き通った女の声が響く。


(気取られたか…。ならば、捕らえて話を聞くまで…)


ふぅ、と小さく息を吐き、いつでも刀を抜けるよう
身構えつつ、俺は倉庫の中に入った。

中にいたのは、3人の黒服の男と…
銀髪に緋い瞳の、まだ若い少女だった。

俺の出で立ちを見て、正体に気付いたらしい男3人が
各々の武器を構えた。


『皇国兵…』

『馬鹿な、幾らなんでも早すぎる!』

『落ち着け。見られたならば消せば良いだけの事だ』


皇国兵に見つかった事で動揺するのだ。
やはりこいつらが噂の組織であろう。
俺は刀を抜き、中段に構えた。

黒服の男達も武器を構え、俺との間合いを詰めてくる。
構えと隙のなさから、ただの賊ではない事は察しがついた。
俺が斬り込む隙を窺っていると、1人身構えずにいた少女が呟いた。


『…そういう事か』


その言葉に、俺も男達も、視線をそちらに向ける。
すると少女は俺の事など眼中にない、とでも言うように
部下たちに声をかけた。


『戻るぞ。もうここに用はない』


そう言うと、部下たちに指示をして俺の横を通り過ぎようとする。
が…それを黙って許すつもりはない。

少女の進路を阻むように刀を突き出せば、流石にピタリと足を止めた。
…だが、次の瞬間。


『…雑兵に用はない。命が惜しければ失せろ。
 今なら見逃してやる』


射抜くような鋭い視線と、強烈な殺気。
生存本能が、この少女は危険だと告げている。
生まれて初めて、肌が粟立つのを感じた。


「…そうはいかん。お前達には吐いてもらわねばならぬ事が多い。
 イズルミまで同行して貰うぞ」


だが、俺も退くわけにはいかない。
こいつらは噂の出所を確かめる、現状唯一の手がかりなのだ。


『…ふぅ。
 契約の名の下に、我が手に宿れ、雷』


少女がポツリと何事か呟くと、雷が少女の手を目掛けて降りてきた。
そしてそのまま掌に宿り、バチバチ、と音をたてる。


『そうまで言うなら仕方ない。少し遊んでやる』


魔術に疎い俺ですら感じる、膨大な魔力。
微かに震える体を押さえ込み、俺は少女に向かって突撃した。





勝負は一瞬だった。
雷撃が俺の体を貫き、勝負あり。
俺は地に倒れ、刀を握る余力すらない。

銀髪の少女は、俺をチラリと一瞥すると、


『殺す価値もない』


そう吐き捨て、そのまま倉庫を去って行った。


『お待ちください、正宗様!』


男達も少女の後を追い、倉庫を後にした。
言い知れぬ無力感と、感じたことのない強い屈辱を
胸に抱きながら…俺は意識を手放した。





気が付くと、俺はイズルミの診療所にいた。
物音に気付いて駆けつけた衛兵が、ここまで俺を運んでくれたのだそうだ。


「…正宗」


痛む体を無理に起こし、ポツリと呟く。
あの少女の名と、あの屈辱は鮮明に覚えていた。

傷が癒えたら、すぐにでも鍛錬を再開しよう。
今までのような生ぬるい鍛錬ではなく、もっともっと、
高みを目指すために。

そのために必要なものを考えながら、俺は目を閉じた。
体に受けた傷と疲労からか、眠りにつくのに時間はかからなかった。
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